今回は「売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則 アルライズ/ジャックトラウト 共著」の概要と所感をまとめます。
本書ではマーケティングにおける不変の法則として22の説が紹介されています。ただ、私は法則によっては悩ましいと言いますか、ほんまかなぁと思うところもあります。なので自分の経験や考え方を持ちつつ、「なるほどこういう説もあるのね」と取捨選択していく感じになりそうです。
・・・そう!この思考(知覚)が第一の法則「一番手の法則」です。人は最初に知覚した事を変えることが難しい(ほぼできない?)らしいのです。私の中で凝り固まった「マーケティングとは〇〇でしょ」という知覚が入り込んでいることを認識しました。心理学の確証バイアスに近いですね。
そんな人間の本能に根付いたマーケティングの法則を一緒に紐解いていきましょう!

記事のGOAL
・本書の概要を理解できる
・日々の業務にどう活用できるかの示唆が得られる
所感混じりの概要
まず本書の大メッセージは、「マーケティングとは知覚をめぐる争いであって、商品をめぐる戦いではない」と言うことです。
まず「知覚」とは、外界刺激に対して自分なりの意味付けを行うことです。
知覚とはなにか?
知覚は刺激に対して意味づけを行う過程です感じ取った外界の刺激に意味づけをするまでの過程を知覚と呼びます。 例えば熱い物に触れた時、皮膚が物理的な刺激(熱)に基づく感覚情報を受け取り、それに対して「熱い」という意味づけを行うまでの過程が知覚です。
出典:知覚とは | 三京房 心理学事典
つまりどんなに競合よりも優れた性能の商品を発売しても、それが生活者に知覚されなければ無意味(売れない)ということです。そして知覚を促すマーケティングには22の法則があり、事例を交えて紹介されています。ではそれぞれ私の所感混じりで紹介していきます。
- 一番手の法則
マーケティングにおいて、自社ブランドが生活者の心の中に一番最初に入り込む(=知覚される)ことが最重要課題。既にカテゴリーNO1の競合よりも優れた性能を持つ商品を作るのではなく、競合のいない新市場を創り、かつ最初に知覚されること。結果、「◯◯カテゴリーと言えば、ブランド□□だよね」と認知され、ブランド名とカテゴリー名が同一名称で呼ばれる状況を創る。(例 バンドエイド、サランラップ、メンソレータムなど)
背景に、最初に生活者に知覚された情報は、基本的に書き換えられることがないため。 - カテゴリーの法則
一番になれない場合は、一番手になれるカテゴリーを新規創造すること。既存市場よりも新しく、生活者にとって意味のあるカテゴリーを定義し、一番手として投入する。(例 コンピューター市場に対して、ミニコンピューター。女性誌市場に対して、大人の女性誌など)
後に出てくる「分割の法則」に通じる法則で、生活者のニーズに応じて市場が細分化されていきます。そしてドラッカーさんや元P&Gの音部さんが言うところの「マーケティングとは市場創造」という言葉に近いです。既存カテゴリーの「良い◯◯」の属性を変更し、新市場として知覚させていきます。(洗濯洗剤の例 既存:良い洗剤は白くなること → 新規:良い洗剤は除菌もできること) - 心の法則
最初に市場に参入するよりも、最初に顧客の心のなかに入りこむ方が重要。ただ、最初に市場に参入した方が最初に知覚されやすい。そして心の中には一気に入り込まなければならない。 - 知覚の法則
マーケティングの世界において、存在するのは顧客の心のなかにある知覚だけである。知覚こそ現実であり、性能などはすべて幻である。- すべての存在は自らの知覚を通してでしか知る術はない
- マーケティングとは知覚の操作に他ならない
- 例として、コカ・コーラ(クラッシック)、ペプシコーラ、そしてNewコークでは、味覚評価と売上順位が正反対である。
- 他の人の知覚をもとに購入決定する場合もある。「周知の事実の法則」
- 集中の法則
見込み客の心のなかに、ただ一つのシンプルで使用可能な言葉を植え付ける。
例 BMW:走行性、フェデル・エクスプレス:翌日配送、IBM:コンピュータ、ハインツ:どろりとしたケチャップ
→言葉の種類は「利点」「サービス関連」「顧客関連」「セールス関連」など- 言葉が永久に持ちこたえることは難しいため、変更が必要なときが来る。事業の拡大に応じて新しい言葉を植え付けていく
- 競合が所有している言葉を使用してはいけない。相手の立場を強固にしてしまうだけ。
- 独占の法則
二つの会社が顧客の心のなかに同じ言葉を植え付けることはできない。
消費者リサーチの結果を見て、カテゴリーで最も重要な言葉(しかし競合が所有済)を手に入れようとして失敗することが多い。例 バーガーキングがマクドナルドの「ファスト(早い)」を奪おうとしたが、敢え無く失敗。 - 梯子(はしご)の法則
ブランドが採用すべき戦略は、生活者の心のなかにある梯子の何段目にいるか*で決まる。(*カテゴリーの非助成想起で登場した順番)- NO1、NO2それぞれに取るべき戦い方がある。
- 一般的に生活者は、カテゴリーにおける自己の梯子に合致する新しい情報のみ受け入れる。
- マーケットシェアと梯子の位置は相関関係にある
- 「エボークトセット」に考え方が近いですね。想起の順位に応じて選ばれる確率が変化します。参考記事:顧客の「意味のある認知(エボークトセット)」を理解しよう
- 二極分化の法則
長期的にあらゆる市場は二頭の馬の競争になる。(一番と二番しか生き残れず、三番手以降は消滅する)- 古くから信頼されているトップブランドと新進気鋭のNO2ブランド
- トップブランドは、カテゴリーのライトユーザーを多く取り込む
- NO2ブランドは、NO1ブランドを好まないユーザーを取り込む
- 対立の法則
梯子の順位を上げる時の戦略は、NO1ブランドの在り方によって決まる。
それは、NO1の強みを弱みに転じることである。NO1の選ばれる理由を見つけ出し、それとは反対の理由を提供すること。
例.「王道/伝統」のコカ・コーラに対して、「新時代」のペプシコーラとして訴求し、コカ・コーラを古臭いものとしてネガティブキャンペーンを展開した。 - 分割の法則
時の流れとともに一つのカテゴリーは、二つ以上のカテゴリーに分かれていく。- おのおののカテゴリーは、区別された個別の存在
- 新しく分割されたカテゴリーには、それぞれ異なるブランド名を使用するべき。例 トヨタ→レクサス。ポッキー→バトンドール
- 同じブランド名を使用したライン拡張は、既存のブランドの言葉が新カテゴリーの知覚を阻害してしまうだけではなく、既存ブランドの言葉も薄めてしまう。
- 遠近関係の法則
マーケティングの効果は、長い時間を経てから現れる。そして長期的な効果は、短期的な効果とは正反対である。- 値引き販売
短期的には売上が増加するが、長期的には顧客の購入単価が下落してしまうため、売上が減少する。 - 製品のライン拡張
短期的には製品数の増加により売上は増加するが、長期的にはお互いの製品特徴を打ち消し合い売上が現象する。
例 ミラービールがブルーカラー向けのビールで成功した後、エリートサラリーマン向けビールを同じブランド名で発売し、最後は両方売上減少。
- 値引き販売
- 製品ライン拡張の法則
生活者の心のなかに入り込むためには焦点を絞らなければならない。特に一度入り込んだ(成功した)ブランドは、長期的に見ると拡張商品がブランドの知覚を阻害し、弱体化させる。 - 犠牲の法則
何かを得るためには何かを犠牲にしなければならない。
・製品ライン
・ターゲット市場
・絶えざる変更 - 属性の法則
あらゆる属性には、それとは正反対の優れた属性がある。顧客にとって重要な親属性を確保し、訴求する。
例 歯磨き粉:虫歯予防(味が悪い)⇔味が良い、白くする - 正直の法則
自分のネガティブな要素を認めたら、顧客はポジティブな評価を与えてくれる。
コツは、既に広く顧客の中にある知覚を利用すること
例「うちは空いているので、並ばずに乗れますよ」スペイン村
→応援してやろう!
「1日に2回嫌な(薬臭い)お味を」リステリン
→良薬口に苦しだな。それだけ殺菌効果が高いのだろう - 一撃の法則
マーケティングにおいて、ただ一つの動きが重大な結果を生む。それは一回限りの大胆な一撃である。それを見極めるには、市場に足を運んで何が起こっているのかを観察・理解する必要がある。 - 予測不能の法則
未来についての仮説はたいてい失敗する。それは競合の動きが見えないためである。しかしトレンドを掴むことは可能。 - 成功の法則
成功は怠慢に繋がり、失敗につながる。理由は客観性を失い、自己の判断を市場のニーズと混同してしまうため。結果、成功した商品/ブランドは、何でも顧客が受け入れると勘違いしてライン拡張してしまう。 - 失敗の法則
失敗に気づいているにも関わらず、ズルズル先延ばしにして傷口を拡げてしまうことが多い。損切りの難しさは、判断した担当者個人のキャリアに傷をつけてしまう懸念から起こる。そうならないようにするために、失敗を歓迎する仕組みや、個人の責任にしないことが重要。 - パブリシティの法則
実態は、マスコミに現れる姿とは真逆であることが多い。マスコミの成功=マーケティングの成功とは限らない。マスコミが取り上げたい情報と、生活者が知りたい情報は必ずしも一致しない。
例 マスコミは最新のテクノロジーなどを好んで扱おうとするが、多くの生活者は関心がない。 - 成長促進の法則
流行(ブーム)とトレンドは違う。流行は見えやすいが、トレンドは変化が緩やかなため見えにくい。マーケティングではトレンドを掴むことが重要。流行は、時として過ぎた後に在庫過多などの問題を発生させる。流行をトレンドにする方法は、敢えて流行に水をさすこと。無理して拡大せず、成長を緩やかにして長期トレンドにしていく。 - 財源の法則
しかるべき資金がなければ、アイディアも持ち腐れる。
まとめ
改めてですが、大事なことは「マーケティングとは知覚をめぐる争いであって、商品をめぐる戦いではない」と言うことですね。マーケティングは市場創造(儲かる仕組み創り)ですが、「市場創造とは、モノやサービスを通じ、生活者に新しい知覚を植え付けて、良い◯◯(カテゴリー)の定義を変化させ、「欲しい!」という気持ちにさせて購入してもらうこと」と解釈できそうです。
また本書では同名称での製品ライン拡張に対して反対の立場を取っていますが、どうでしょう?。個人的には成功したブランドの強みを活かして拡張できるのであれば、ライン拡張もアリだと思っています。例えば無印良品は、シンプルで上質なライフスタイルを提供してくれるブランドだと思っていますが、雑貨や衣服だけではなく、最近では食料品やホテルにまでライン拡張しています。でも本書で書かれているような知覚の弱体化は起こらない気がします。もしユニクロみたいに有名デザイナーとコラボのような事を始めると、「シンプル」という言葉(知覚)と相反して、ブランド本体の弱体化が起こりそうですね。なのでこのライン拡張は顧客視点で引き続き検討していきたいところです。




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