ブランディングとは、消費者の記憶ネットワークに、自社製品やサービス並びに連想イメージを根付かせ、ニーズが顕在化した時に真っ先に想起してもらうことをゴールとしたマーケティング活動の一つです。
※イメージ「記憶ネットワーク」

独自のブランド資産の構築とは?
消費者の記憶ネットワークに自社やブランドを根付かせたり、想起を促すために有効な方法が、独自のブランド資産の構築です。
独自のブランド資産は、「ロゴ」「ジングル」「キャラクター」「カラー」「セレブリティ」タグライン」「フォント」など、ブランド名とリンクし、ブランド(独自性)を成立させているものすべての要素を指します。
「ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇」では、そもそもなぜ独自のブランド資産が重要か?どうやって築くのか?どうやって強さや進捗を図るのか?などが詳細に書かれており、ブランドに携わるマーケターの必読書でございます@

個人的要点まとめ
- 売上未達の解決策として、独自のブランド資産の変更を検討したくなるが、多くの場合は行わなくてもよい変更をしてしまい、ブランドのアイデンティティを損なって売上をさらに落としている。
- ブランドは単独では存在しない。既存の記憶ネットワークと結びついて存在する。初めて聞いたブランド名であっても、既存の別の概念と結びつけて記憶する。もしくは不必要だと判断し忘れられる。記憶には目的があるという考え方は重要。
- ブランド体験やコミュニケーションを通じてリンクが強化され、記憶が強固なものになっていく。逆に何も刺激がなければ時間経過とともに忘れていく。
- 消費者にとっての独自のブランド資産のメリットは、ニーズを満たしたい→ブランドが欲しいと思った際に、発見を容易にする。
- 独自のブランド資産は、ブランド名とブランド資産をどのように配置すれば効果的を考える。(引用画像)

- 記憶されたブランドにアクセスするためには、ネットワークに入るためのきっかけが必要。きっかけにもっとも近くに存在している連想が先に引き出される。
- 記憶を引き出す可能性を押し上げているものは「フレッシュネス(新鮮さ)」とコンシステンシー(一貫した繰り返し)。記憶を引き出す際に、過去の情報と不一致があると、記憶(ブランドとのリンク)に変化が生じるか弱体化するので注意。
- ブランディングには3つの目的がある。
- ブランドの所有権を商標として残すこと
- 消費者の記憶ネットワークに望ましいブランド連想を定着させること。ブランドがネットワークの中で意味を成すためには、適切な記憶領域の中に根付く必要がある。
- 個々の異なるマーケティング活動をつなぐこと
- ブランディングに効果がない広告例
- 製品カテゴリーの広告になっている(カテゴリー=自ブランドと認識されているオンリーワンブランドの場合は除く)
- クリエイティブアイデアの広告になっている(面白かったけど何のCMか分からない)
- 場所や媒体の広告になっている(電車が可愛いだけラッピング広告など)
- シチュエーション想起の広告になっている
- メンタルアベイラビリティ(想起されやすさ)は、ブランド選択における重要な第一ステップである。想起されなければ検討されることも選ばれることもない。(調査で未購買客に「なぜ買わなかったのか?」を聞く意味がない理由はここにある。単に想起しなかったから。)
- メンタルアベイラビリティを強化するためには、購買のきっかけとなる潜在記憶(カテゴリーエントリーポイント※以後CEP)と、広告メッセージがリンクしていなければならない。例 朝(CEP)専用のコーヒー「モーニングショット」など
- ブランドのCEPが多いほど、ブランド記憶の引き出しが増え、選ばれる確率が増えていく。市場シェアの大きいブランドほどCEPとのリンク数が多い
- 企業のブランド色を強めたり、早期でブランドの存在を理解させると、広告の好感度が下がるという説があるが、調査の結果相関性は低い。正しいブランディングの結果、広告の好感度が低下するわけではない。(個人的には押し売り感や過度な誇張表現が好感度に悪影響している気がします)
- 広告認知を高める(雑多な環境で視聴者の注意を引き付ける)には、「タグライン」→「映像資産」→「ブランド名」の順番で効果が見られたが、広告によるブランド認知のスコアは「ブランド名」→「映像資産」→「タグライン」となった。広告されているブランドが明確に認識されないと売上やブランディングに貢献することはない。「ブランド名」と「各ブランド資産」とのリンクの新鮮さや強さを理解し、クリエイティブに落とし込むことが重要である。
- 人が漠然と周囲に目をやっているような環境においては、カラー資産が有効

- カラー資産には単色、色と色の組み合わせ、色とデザインの組み合わせがある。カラー資産が重要な理由は、色は感情を刺激し、特に意識していない場合では色だけが認識されるため。
- 自ブランドで使用できる色は、カテゴリー・サブカテゴリー・競合ブランドの色を除外して残った色を採用すべき
- 色とデザインを組み合わせることで、単色よりも独自性が高まる
- 形状資産(ロゴ・シンボル・パッケージなど)
- ストーリー資産:広告クリエイティブの中に取り込んで、ストーリーの軸を作れるような資産。スタイル(レッドブルの漫画)や、モーメント(オレオの食べ方提案)、コンポーネント(ソフトバンクの白い犬)など
- ブランドの顔資産(セレブリティ・スポークパーソン・キャラクター)
- 人の脳には人の顔の認識に特化した領域があり、注意を引くのに有効な資産。特に親しみのある顔は、雑多の中でもスピーディーに反応する。
- セレブリティの起用は、広告認知を高めるには有効だが、ブランド認知の効果は薄い(メンタルコンペティション)場合がある。背景にセレブリティの他のイメージと競合したり、広告で本来伝えたい内容と競合するため。
- セレブリティを活用する場合は、カテゴリー顧客と親和性がある人で、新鮮さや目立ちがそれほど高くない人が賢明である。

- 言葉を使った資産(タグライン、スローガン、キャッチコピー)
- 知名度と独自性を強化する3つの要因
- 音声面の強化(タグラインの音声化など):シンプルで語呂の良い、発音しやすいタグライン
- ブランド名の使用
- 希少な言葉の使用
- 知名度と独自性を強化する3つの要因
- 音声資産(ポピュラーソング、ジングル、BGM、ボーカルなど)
- ジングルは他の資産よりもおおむね良いが、基本的には音声を基本にして資産を構築するのは困難であることが分かる。(独自性は高いが知名度が上がりにくい)


- ブランド資産を計る2つの指標
- 知名度:カテゴリー消費者のうち、各ブランド資産とブランド名をリンクできた割合
確認方法:ブランド資産をきっかけにして、ブランド名を純粋想起できるかどうか? 例 「just do it 」や「スウィッシュマーク」(ブランド資産)=ナイキ(ブランド名)
※画像引用
- 知名度:カテゴリー消費者のうち、各ブランド資産とブランド名をリンクできた割合

- 独自性(所有性):カテゴリー消費者のうち、ブランド資産と自ブ
ランドのみをリンク(独自性の獲得)できた割合
確認方法:ブランド資産をきっかけにして、競合を含めたブランド名の純粋想起における自ブランドの割合 例 50%が良し悪しの目安

- 独自性に繋がりやすいブランド資産は「キャラクター」「ロゴ」「フォント」
- メンタルコンペティションのタイプ

- 競合ブランドとの比較は良いが、目標はあくまで100%の知名度と独自性を狙うべきで、それは小規模ブランドであっても可能である
- 確認タイミング
- 独自のブランド資産に変更を加えるとき:生産構築活動の成果を評価するときと、アイデンティティに大規模な変更提案がある場合。
- ブランドが変化するとき:リブランディング、ブランドポートフォリオの拡大、カテゴリー拡張、ブランドの新国進出
- 会社が変化するとき:ブランド買収や他社との合併など、企業価値に影響を与える変化があった場合。
- 実際に活用されているブランド資産と効果にはGAPが存在。企業が注力するパッケージカラーやデザインは比較的ブランディング効果が低いことが示唆された。


- 各ブランド資産は、何よりもまずブランド名とリンクすることでブランドに利益をもたらす。逆にブランド名とは無関係な意味をもつ強力なブランド資産を持ってしまうと、競合ブランドとメンタルな競争状態(メンタルコンペティション)に入り、課題が増えてしまう。(例 多くのTVCMに出ている著名なセレブリティを活用すると、他の出演CMのブランド想起と競合してしまうなど)
- ブランド名と無関係な意味合いが強い資産を使う場合は、その意味が発信するメッセージに促している場合のみが有効。また競合も使用しやすいことが多く、同じような資産開発・使用してしまい、メンタルコンペティションが起こることもある。
- 長期的な視点では、意味を限定しない資産をもつことがリスクが少なく、有効である。
- 独自ブランド資産の管理システムの作成
- 第一段階 ベンチマーキング:現状の資産を棚卸し、どの資産を投資するか、また新たに開発を進めるべきかを判断する。
- 第二段階 優先順位の選定:リソースは有限なため、優先順位を決めて取り組む。また一貫性に欠ける資産を取り除く。投資の可能性のあるブランド資産を複数所有するよりも、知名度も独自性も100%の1つのブランド資産を所有するほうがよい。
- 第三段階 エグゼキューション:優先度の高い資産を活用できる機会を特定する。その際、ブランド名をおろそかにしてはいけない。
役立つチェックリスト
・プレゼンス:現在どのブランド資産を使用しているか?
・プロミネンス:ブランド資産は際立っているか?
・共同提示:ブランド資産とブランド名の距離は近いか?
- 第四段階:フィードバックとモニタリング
- 新しい資産構築活動の評価は最低でも6ヶ月は必要。競合ブランドのモニタリングも併せて行う。
- 第五段階:ブランドを守りながら進化する
- 独自のブランド資産を改善するための提案に「NO」と言えるようにする。変化しなければならない時が来たら、革命ではなく進化を考える。
- 強い独自ブランド資産を構築するための4つの戒め
- 懸命な選択:ブランド資産ならではの貢献があるか。そしてリソースの細分化に注意。
- 正しい優先順位づけ:一度に多くの資産を築こうとしてはいけない。1つのブランド資産を持つことは、投資の可能性を秘めた資産1つの10倍分の価値があることを忘れてはならない。
- 質の高いエグゼキューション:価値の高いブランド資産であればすべてのカテゴリー購買客に認知される。これは、エグゼキューションが広範囲であるほど、またプロミネンスがあって、すべてのカテゴリー購買客に届くようにデザインされているほど早く起こる。
- 変化のための変化を避ける: 独自のブランド資産の構築においては一貫性を維持することが重要。
所感
今作は独自のブランド資産の構築について具体的な示唆に富んでいました。ただ、前作を読んでからのほうが理解が早い気がしますので良ければこちらも!


マーケティング界隈において、「ブランディング」という言葉が当たり前のように飛び交っていますが、改めて本質を理解し、何をすべきで、何をしないべきなのかを理解することは大切ですね。
※そもそも「ブランド」についてまとめた記事はこちら
例えば毎年お約束事のように変化する商品パッケージは、意味がないどころかブランド資産を傷つけている可能性があります。変化(手段)が目的化しており、仕事をした気になっているマーケターにはならないようにしたいですね。(昔の私)
・・でも事情は分かるんですよね。例えば食品の場合、コンビニエンスストアはパッケージ変更に伴うJANコード変更によって再配荷施策が打ちやすくなったり、新CMに話題のセレブリティが登場すれば、それだけで採用してくれるスーパーも多いです。(スーパーからすると客から問い合わせが来るため) ただ、そんな要求や誘惑には負けないよう理論武装したいところです。(頑張れ私)
あと思ったことは、本来ブランディングは中長期的に芽が出る「投資」であり、単年で刈り取る「販促」ではないはずです。でもブランド担当者は単月単年実績を求められることが多く、種まきに手が回らずに、目先の刈り取りばかりに精を出しているケースも多そうです(今の私)。
特にTVCMはもっと役割を明確にして制作すべきですね。ニーズの顕在層に今すぐに買ってほしい場合は、使用シーン&インサイトに対して便益&独自性を訴求する。
ニーズの潜在層の記憶ネットワークに残したい場合(顕在時に第一想起を狙う場合)は、本書に記載がある通り、既存記憶ネットワークのどの場所に、CEP(想起のきっかけとなるオケージョン)とブランド名及びブランド資産をアンカーするかを定め、潜在層でも興味を引くようにエグゼキューションを工夫するのが良さそうです。そして継続的に一貫性をもって実行する。
この辺りは購入サイクルの短い最寄品、サイクルの長い買い回り・専門品とでも、ブランディングのやり方は異なりそうですね。
個人的に気になるブランディング事例「トヨタイムズ」
最近企業のブランディング活動で気になるのが、トヨタさんの「トヨタイムズ」です。直接車の宣伝をする訳ではないので、目的は私達の記憶の中にブランドエクイティを築き、車が欲しくなったらトヨタを想起させたり、例えば日産と迷ったら好意度でトヨタが選ばれるようにすることなのだと察します。
ではトヨタイムズが築きたいブランド連想とはどういうものなのでしょうか。
私は本施策によって以下が「TOYOTA」のブランド連想にリンクされています。
「もの(車)づくりへのこだわり」「SDGsへの取り組み」「色んなスポーツや事業に協賛しているな」「豊田社長(創業者一族)が元気」「熱そうな企業風土」
ではこれらのブランド連想が、私の車の購買行動に影響を与えたのかどうか?ですが、半年前に車を買い替えた際には全く想起されなかったです。
これは私の車の選定軸が特殊だからなのかもですが、、「全高155センチメートル以下(機械式駐車場のため)」「5人乗り」「デザインが好み」で絞っていきました。最終的にはマツダのCX-30とスバルのインプレッサの戦いになり、「デザインが好み」でCX-30が勝利しました。確かどこかでカローラフィールダーのサイトを見たかもしれませんが、あまり記憶にありません。
では実際のトヨタイムズの目的や目標(KPI)は何なのでしょうか。参考になる記事を見つけました。
トヨタのファン化を調査で測定
気になるのは効果測定だ。商品CMと異なり、購入意向の変化だけでその効果は測定できない。トヨタイムズが目指すのは共感を生み、トヨタのファンをつくること。そこで四半期ごとにトヨタを応援したい気持ちの変化をアンケート調査で追っている。具体的にはトヨタのサービスや事業を他の人に推奨するか、イベントの参加意向、他の人がトヨタを批判していた場合に擁護するかといった項目について聞く。急激に上昇する数値ではないため、現状は横ばいに近い形だという。
2020年8月21日 日経クロストレンド掲載 テレビCMがオウンドメディアに 「トヨタイムズ」制作の舞台裏
また、Webサイトのアクセス数やYouTubeチャンネルの登録者数も重要な指標だ。現状、トヨタイムズのアクセス数は数十万UU(ユニークユーザー)、YouTubeチャンネルの登録者数は12万超。ただ、「トヨタのステークホルダーの数を鑑みれば、到底満足できる数字ではない」と北澤氏は自己評価する。
もっとも、このプロジェクトはインナーコミュニケーションの意味合いも強い。社員の働くモチベーションの向上や関連企業の理解促進につなげることも大きな狙いだという。「もっとコンテンツに魅力を持たせて、読者を増やしたい」と北澤氏は意欲を見せる。トヨタイムズはメーカー流のオウンドメディアとして定着するか。編集部の腕の見せどころだ。
目的はファンづくり、目標は主に推奨度ですかね。
インナーコミュニケーションの意味合いも強いそうなので、メインターゲットは既存顧客を含めたステークスホルダー。なので未顧客(トライアルや休眠層)を狙った施策ではなく、ブランディングの中でも、リレーションシップ(関係構築)に重きを置いているのだと解釈しました。
2020年では12万人だったYoutube登録者数は、2025年5月時点で約55万人に増えているところを見ると、着実にファンを伸ばしていそうですね。再生回数もバラツキはありますが数十万回再生の動画も多く、企業アカウントにしてはすごいですね。いくつか覗きましたが、もはや豊田章男さんのチャンネルですね。笑
こういう取り組みはお金と時間がかかる割に成果が見えにくいので、ぜひ感触を聞いてみたいなと思う今日このごろでした。




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