今回はいよいよターゲットの「インサイト発掘」についてです。

インサイトってなに?どうして必要なの?どうやって見つけるの?
では、順番に解説していきたいと思います。
インサイトとは
インサイトとは何か?ズバリ生活者の潜在的な欲望であり悩み(不満)です。
もう少し踏み込むと以下です。
「自身も気づいていない、無意識下の根源的な欲求が、現在の生活や選択によって満たされずにいることから生じる、感情的な不満や違和感」
つまり、本人も本当に欲しいモノや欲しい理由に気が付いていなかったり、普段は目を背けていたりする悩みごとです。なので、言われると「ハッとして」「解決に向けて行動」したくなります。これは既に顕在化されているニーズとは異なるものです。
私はクリステンセン教授のジョブ理論の考え方も近いと思うので併せてご紹介します。
「ジョブとは何か ジョブの基本定義は以下のとおりだ。
『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)』クレイトン・M・クリステンセン著
・ジョブとは、特定の状況で人あるいは人の集まりが追求する進歩である。
・成功するイノベーションは、顧客のなし遂げたい進歩を可能にし、困難を解消し、満たされていない念願を成就する。また、それまでは物足りない解決策しかなかったジョブ、あるいは解決策が存在しなかったジョブを片づける。
・ジョブは機能面だけでとらえることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、こちらのほうが機能面より強く作用する場合もある。
・ジョブは日々の生活のなかで発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。
・片づけるべきジョブは、継続し反復するものである。独立したイベントであることはめったにない。」
例:有名なインサイト事例
①「アイドル好き」:会えないアイドルへの憧れを煽られているいることに、うんざり
→この不満が爆発した結果、犯罪ですが、アイドルをストーカーしたり住宅まで侵入したりするのかもしれません。
②「マクドナルド好き」:時には欲望の赴くままハンバーガ
ー(お肉)をかぶりつきたい
→不健康と分かりつつ暴飲暴食したい時がありますよね。こんな時は危険(ストレス)からの逃避本能が働いているのかも?
③「小さな子を持つ親」:子どもと一緒に過ごせるクリスマスの機会は限られている
→損失回避の本能ですね。そんなこと分かっているけど聞きたくない。。そんなインサイトです。
これはそれぞれ「①会いに行けるアイドルAKB48」「②クォーターパウンダー/メガマック」「③生涯忘れられないクリスマスの感動(USJ)」として価値提供され、大ヒットしています。
どうしてインサイトが必要なのか、役割は?
1980年頃まででしょうか、まだ世の中にモノが不足し、生活者も現代ほど細分化されていなかった時代は、顕在化された欠乏ニーズに応じて同一商品を大量生産・低価格で販売すれば売れていました。
しかし現代は違います。世の中にモノやサービスが溢れ、大体のニーズが満たされてしまい、欲しいものが少ない状況です。更に、それらのモノやサービスが大体どれもいい感じなので、大きな差も感じられません。結果、価格競争に陥り利益を削り合う状況になっていきます。
よって、生活者の隠れた「満たしたい感情(インサイト)」を見つけ出し、顕在化させるところから始める必要があります。
主にビジネスにおけるインサイトの効果は以下です。
インサイトの効果
・新しいカテゴリーやサブカテゴリーを創造するための出発点(イノベーション) 例 スマートフォン、ウォークマン
・既存カテゴリーの競争優位を変える起爆剤(ゲームチェンジ) 例 持ち運びカメラ、音楽の買い方(サブスクリプション)
・ブランドに興味関心を持ってもらうためのスイッチ(ACB:Accepted Consumer Belief) 例 日本人の2人に1人が癌になる(がん保険)、 「そうだ京都、行こう。」(想像するにコピーのインサイトは、すぐにできる逃避行)
インサイトと生存本能と不合理
脳科学や行動経済学の知見によると、人間の思考や行動は5%の意識と、95%の無意識とで成り立っているそうです。そしてこの無意識こそが、実は意思決定に深く関わっています。これは人類が誕生して、狩猟採集時代からあまり変わっていない生存本能(脳の仕組み)です。
これによって人は時に「予想通りに不合理」な行動をとります。狩猟採集社会では合理的な仕組みが、現代では非合理的になってしまうことが多いからです。
なので、インサイトは必ずしも合理的ではないという点を留意する必要があります。
例えば、選べるお弁当が1000円と500円の2種類の場合は500円が最も選ばれますが、ここに750円のお弁当を加えるだけで、この真ん中が一番売れます。今すぐ1万円をもらえるのと、来年に1万2千円をもらえるのでは、多くの人が前者を選ぶなどです。これは、それぞれ「損失回避の本能」と、「目先の報酬を優先する本能」が働いています。
しかしその不合理な行動は脳の仕組みなので規則性があり、予測もできるため、上手くビジネスに活用することが可能です。※この点についてはぜひこちらの本を参考下さい
「本書(や類書)の実験結果が示すように、わたしたちがくだす決断は、従来の経済理論が仮定するほど合理的ではないどころか、はるかに不合理だ。といっても、わたしたちの不合理な行動はでたらめでも無分別でもない。規則性があって予想することもできる。脳の基本的な仕組みのせいで、だれもが同じような失敗を何度も繰り返してしまう。だとすれば、ふつうの経済学を修正し、未検証の心理学という状態(理由づけや、内省や、何より重要な実験による精査という検証をしていないことが多い)から抜けだすのが賢明ではないだろうか。 経済学は、人がどのように行動すべきかではなく、実際にどのように行動するかにもとづいているほうがはるかに理にかなっているのではないだろうか。「はじめに」で述べたように、この素朴な考えが行動経済学の基礎になっている。人がいつも合理的に行動するわけではなく、誤った決断をすることも多いという(かなり直観的な)考えに着目した、新しい学問分野だ。」
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン アリエリー著
インサイトの見つけ方
インサイトの発掘には少々コツが必要です。
ではどうすれば良いのか?
インサイトは消費者の言動から直接出てきたりしません。(出てくるのはニーズか嘘です。)
消費者の隠れた心理を見出す手順
1.インサイト発掘の目的を定義。どういうカテゴリーやブランドの選択に関するインサイトを発掘するのか、主に何に活用するのかを決めます。
2.カテゴリーにおける①自社の特異的なロイヤルユーザー、②一般ユーザー、③競合ユーザーの選択理由やブランドについての発言や行動を、5W1Hの視点やカスタマージャーニーを通じて観察します。
その際、特に①ロイヤルと②一般の差異に注目します。①ロイヤルは価値のインサイト(不満・未充足インサイトの裏返し)が顕在化している場合が多く、この価値インサイトがどんな本能に突き刺さっているのか?大多数の一般ユーザーや未顧客にも刺さらないか?を検討します。(例 アイドルを支配したくてストーカー行為はダメだけど、会いに行って握手くらいの塩梅なら良いんじゃないか?など)
3.出てきた事実、価値や不満に対して、「Why」でさらに深堀りしてきます。そして最終的にはマーケターが解釈し、探り当てます。
4.仮定したインサイトをターゲット層にも響く塩梅に調整して提示し、「ハッ」と共感や反発などの反応が出るかどうか確認します。(例 「会えないアイドルへの憧れを煽られているいることに、うんざりする時ないですか?」 →「うっ、、確かに」「うるせー!別にいいんだよ!」など)
以下ご紹介する方法は一番簡単に低コストでできる方法です。
※急造のインタビューなので中身はともかく、方法の紹介です
インタビュー形式
- まず設定したコアターゲットの情報を、調査データなども見ながらまとめます。コツは1人の生活者として具体的にイメージできるところまで磨き上げることです。ペルソナと呼んだりします。注意点は、在りもしない人を希望的観測で創ってはいけません。たった一人でも良いのでリアルな事実をベースにまとめていきます。
- まとめたターゲットに近い人にインタビュー、もしくは自分が対象のモノやサービスを利用するなどして、ターゲットに憑依して※自問自答します。
今回は自動車を検討中の男性にしましょう。(モデルは私です。笑)
スタート:
「私はどんな自動車が欲しいのだろうか?私は家族4人が楽に乗れる広さがある車が欲しい。でもTHEファミリーカーのようなデザインはちょっと嫌。」
なぜ?:
広さについては奥さんの要望。デザインは私の好み、昔からミニクーパーとか小型車のデザインが好きだった。なかなか広さと好みのデザインは両立しない。。
ただ広さは奥さんが子どもを楽に乗せられたり、買い物の荷物を乗せるためらしい。頻度は週に3−4日と多いため、こちらのほうが優先事項かもしれない・・(はぁ・・)
なぜ?:
だって私の好みのデザインで選んだら奥さんの要望が全く叶えられないんですよ。
でもあれなんだよな。話が逸れるのですが、私ドライブは一人でしたいんでよ。好きな昔の音楽をかけて高速を走っていると、とても爽快な気分になれるんですよね。なんて言うかその・・学生時代に戻れたと言うか、、あの頃はね。楽しかったなぁ。いや、戻りたいわけではないんですよ。今も幸せです、きっと。そうか、重要なのはデザインではなくて、自分らしさを取り戻すことなのかもしれない。 - 生活者から出てきた言葉を基に、マーケティング担当者が解釈を入れていきます。
この男性には、顕在化されたニーズと、まだ自身でも理解しきれていないインサイトがありそうな気がしますね。家族想いなお父さんの自分と、本来の自分への願望の間で葛藤してそうじゃないですか?笑
ニーズ:家族4人が楽に乗れる様な広いスペースと小型車のようなデザインが両立された車
インサイト:時には家族(父)の役割から開放され、自分らしくリフレッシュしたい - 今の情報を以下のフレームワークでまとめます。
大体BecouseとButあたりにインサイトのジレンマがあります。最後に一言で表す表現をTopLineに加えます。
TopLine:「いつも優しいお父さん」では疲れてしまう
I want~:私は家族4人が楽に乗れる様な広いスペースと小型車の様なデザインが両立された車が欲しい。
Becouse~:なぜなら、家族想いの理想の自分と、そこから逸脱した本来の自分の両方を大事にしたいから。
But~:しかし、そんな相反する機能を持った車なんて存在しないので、今回も私が我慢するのだろうと諦めている。
いかがでしょうか。インサイトっぽいですか?笑
このお父さんに、「いつも優しいお父さんでは疲れてしまいますよね。時には昔のように颯爽と遠くの世界に行きたくなりませんか?」と言ったときに、ハッとした顔で、「そうなんですよ!なんとかなりませんかね??」と食い気味に反応したらインサイトです。
このお父さんが車に欲しいのは自己表現で、デザインで叶える方法もありますが、それ以外でも充足できるかもしれませんね。
参考 人間の欲望リスト
インサイトを探るとき、先程紹介した「欲しいの本質」に書かれてある株式会社デコムさんの「欲望マンダラ」がとても参考になるので、紹介させて頂きます。
これは人間の本能的な欲求が8方向あり、それぞれエンジェルとデビルの側面が存在することを示しています。例えば「律」の欲求では、相互理解の上で成り立つ「調和」を求める一方で、暴力的な「支配」の欲求が存在します。(性善と性悪の両方存在)
ちなみに残念ながら、人間はデビルの側面に強く惹かれる性質があります。短絡的ですが即効性があるデビルインサイトの方が、種の保存に効果的だったからでしょうか。もしくは優先ではなく満たしていく順番なのでしょうか。キングダム(漫画)を見ても、平和な世の中を作るために中華を統一するぞ!まずは敵国を滅ぼそう!という順番になっています。
私自身振り返っても、仲良く(調和)の前に、支配まではいかなくとも、敵ではないと認識することは重要ですね。これはつまり心理的には支配していることなのかしら。
生成AIに聞いてみましょう 笑 ↓↓
■ 人間の欲求における「デビル」と「エンジェル」
人間の欲求には常に両面存在
- 建設的・協調的な欲求(エンジェル)
例:理解されたい、共感したい、調和したい、成長したい - 破壊的・防衛的な欲求(デビル)
例:支配したい、攻撃から身を守りたい、排除したい、優越したい
多くの人が“強く”反応するのはデビルインサイトの方です。なぜならデビルの欲求の多くは、生存本能(種の保存)の延長線上にある「短期的に危機を回避する」機能を持っているからです。言い換えると、「長期的な幸福」よりも、「今すぐの安心・安全」の方が脳にとっては優先されやすい。これは心理学の「プロスペクト理論」や「損失回避バイアス」、進化心理学の観点とも重なります。
生存本能が満たされた現代社会の弊害になっている一例ですね。。
話が脱線しましたが、ここのポイントは、エンジェルだけを訴求しても多くの人にとっては「わかるけど綺麗事だよねー」と流され、デビルだけを訴求して響いたとしても、それは持続的な幸福には繋がらないというジレンマが存在していることです。
なので目的は幸福に置きつつも、狙う生活者の状況や心理に合わせてデビルとエンジェルを組み合わせるということが必要ですね。言うは易しですが。
例:
①自己実現を目指す層には「希望 → 共感 →仲間意識」の流れ(エンジェル主導)
②焦り・孤独感が強い層には「共感 → 解決」の流れ(デビル出発→エンジェル終着)

他にも人間の根源的欲求を理解する上で参考になるモデルを紹介します。
マレーの2次的欲求リスト
1 Achievement 達成、成功したい
2 Affiliation 親密な関係を築きたい
3 Aggression 攻撃、反抗したい
4 Autonomy 自立、自由でいたい
5 Blame-Avoidance 非難されるのを避けた
6 Counteraction 名誉回復したい、リベンジしたい
7 Defendance 自己防衛したい
8 Deference 権威に従いたい、敬意を払いたい
9 Dominance 他人を支配・指導したい
10 Exhibition 自分を目立たせたい
11 Harmavoidance 危険・失敗を避けたい
12 Infavoidance 恥をかくことや失敗を避けたい
13 Nurturance 他人を助けたい、世話したい
14 Order 秩序を保ちたい、整理整頓したい
15 Play 遊びたい、楽しいことをしたい
16 Rejection 他人を遠ざけたい、拒否したい
17 Sentience 感覚的快楽を求めたい(美・快)
18 Sex 性的満足を得たい
19 Succorance 他人に頼りたい、助けられたい
20 Understanding 知識を得たい、理解したい
21 Cognizance 知的好奇心が強く、探求したい
22 Construction 何かを創造したい
23 Recognition 他人から認められたい
24 Acquisition ものを所有したい、獲得したい
25 Retention 所有しているものを保持したい
26 Abasement 自己を卑下したい、罰されたい
27 Contrariance あまのじゃく的に反発したい
これを理解しやすくするため、有名なマズローの5段階欲求で分類してみたのが以下。(やや独断と偏見で)
ここでも、文脈次第では満たすと幸福につながる欲求と、不幸に向かいそうな欲求がありますね。人間には天使と悪魔の両側面あることを認識して、欲求をコントロールしたいものです。
第1段階:生理的欲求(生命を維持したい)
・空腹、渇き、性欲、排泄、痛みの回避、睡眠などの生存直結型欲求
・Sex 性的欲求 生殖のための本能的な欲求。
第2段階:安全の欲求(危険を避けて安心したい、自己防衛、自己保存欲求)
・Harmavoidance 危険回避 危険や損害を避けて身を守りたい。
・Blame-Avoidance 非難回避 他人から責められたり否定されたくない。
・Defendance 防衛 自分の立場や信念を守りたい。現状維持。
・Order 秩序 整然とした環境や手順を好む。混乱を避けたい。
第3段階:所属と愛の欲求(仲間とつながりたい)
・Affiliation 親和 仲良くなりたい、人とつながっていたい。
・Understanding 理解 世界や人を深く理解したい。
・Nurturance 養育 他人の世話をしたい、愛情を与えたい。
・Succorance 援助希求 他人に守ってもらいたい、依存したい。
・Deference 服従 尊敬する人に従いたい、社会的な秩序を守りたい。
第4段階:承認の欲求(他者承認が安定すると自己承認が育つ)
・Recognition 承認 他人から褒められたり、称賛されたい。
・Exhibition 自己顕示 自分を目立たせたい、見てほしい。
・Dominance 支配 他人をリードしたい、影響力を持ちたい。
・Aggression 攻撃 状況や他者に対して破壊的・変革的にかかわりたい。
・Contrariance 逆らい あまのじゃく的に、社会の期待に反発したい
・Abasement 自己卑下 自分を犠牲にしてでも他者に従いたい、媚びへつらい、許されたい
第5段階:自己実現の欲求(自分らしくありたい、内発的、意味的)
・Autonomy 自立 自分の意思で自由に動きたい。
・Achievement 達成 難しい課題に挑戦し、成功したい。
・Cognizance 探求(知的好奇心) 知りたい、学びたい。
・Construction 創造 新しいものをつくり出したい。
・Play 遊戯 創造的で自由な遊びを楽しみたい。
では次回、このインサイトを解決するWhat(Benefit)を考えていきましょう。ではでは

↓ココナラでこんなこともやっています。興味があればぜひ!
マーケティングとは?がざっくり理解できます 実務10年以上で得た実経験を基に、要点をギュギュッとお届け。




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