今回は『ホモ・サピエンス全史 著ユヴァル・ノア・ハラリ』を読んで、マーケティング視点で所感をまとめたいと思います。人類の進化とマーケティングの関係、特にマーケティングの力の秘密や恐ろしさなどが見えてきます。

本の要約
まずざっくり本の内容を言うと、我々「ホモ・サピエンス」がどのようにして地球の支配者となった経緯が分かりやすく書いてあります。以下年表で重大な分岐点をまとめています。
歴史年表まとめ
| 年代(概算) | 出来事・革命 | 内容の要約 |
|---|---|---|
| 約45億年前 | 地球が形成される | |
| 約38億年前 | 生物が出現 | 生物学の始まり。 |
| 約250万年前 | 初期人類の登場 | アフリカで最初のヒト属(ホモ・ハビリスなど)が現れる。石器を使い始める。 |
| 約200万年前 | 人類がユーラシア大陸へ拡大。異なる人類種が進化 | アジアやヨーロッパに拡散。火を使い始める。複数のヒト種が共存。 |
| 約50万年前 | ネアンデルタール人が進化 | 30万年前ほどから火を日常的に使用。 |
| 約20万年前 | 東アフリカでホモ・サピエンスが進化 | まだサピエンスは数多くの生物の中でも地味な存在 |
| 約7万年前 | 認知革命 | サピエンスが「虚構(神話、宗教、物語)」を信じる能力を獲得。大勢との協力が可能に。言語と想像力が進化し、集団行動の拡大へ。 |
| 約4.5万年前 | 世界拡散 | オーストラリア大陸へ拡散。多くの大型動物種を絶滅させる。 |
| 約3万年前〜1.3万年前 | ホモ・サピエンス以外の人類種の絶滅 | サピエンスが他の人類種を絶滅に追い込む |
| 約1.2万年前 | 農業革命 | 狩猟採集から農耕へ。食糧生産が安定するも、生活は狩猟採集社会より過酷に。人口増加、定住、階級社会の始まり。 |
| 約5000年前 | 王国・貨幣・書紀・多神教の形成 | 食糧の余剰により階層社会、支配者、宗教、貨幣、文字などが誕生。抽象概念(神、王権、国家)への信仰が社会を組織。 |
| 約2000年前(1世紀) | 統一的宗教と帝国 | キリスト教や仏教などの普遍宗教と、大帝国(ローマ、漢)が登場し、大規模な統治が可能に。 |
| 約500年前(15世紀) | 科学革命 | 無知の自覚から近代科学が始まる。知識の拡大とともに帝国主義・資本主義が連動。西洋が世界を支配しはじめる。 |
| 約200年前(18世紀) | 産業革命 | 機械、工場、エネルギー革命。大量生産・大量消費の時代へ。都市化と労働者階級が誕生。家族とコミュニティが国家と市場に代わる。 |
| 約100〜50年前(20世紀) | グローバル化・技術進歩 | 資本主義とテクノロジーの融合。人類が環境や遺伝子さえ操作する存在に。民主主義、自由主義なども「虚構」として再解釈される。 |
| 現在 (21世紀) | バイオテクノロジーとAI | ホモ・サピエンスが「ホモ・デウス(神のような存在)」になる可能性。人間性や意識の意味が問われる。 |
マーティング視点での考察
虚構(フィクション)とブランディング
ホモ・サピエンス(以下 人類)が持つ独自的な優位性は、約7万年前に起こった認知革命以降、「国家」「宗教」「お金」などの虚構(フィクション)を創り出し、信用し、大勢の仲間と協力できる能力です。
確かに「国家」「宗教」「お金」ってそもそも何だろう?と考えると、それは実在しない存在なんですよね。みんなが価値を信じて、信用しているから成り立つ空想です。この虚構のおかげで人類は同じ目的に向かって団結し、不幸が起こった場合でも意味を見出し、死への恐怖を克服しようとするなど、生存競争に非常に有効でした。
これはマーケティングの「ブランド/ブランディング」と全く同じ概念ですね。どうして我々が「ブランド」を好み、重要視するのか、それは人類の生存本能に根ざしているからであり、ブランドが持つ空想のストーリーには、人を動かす大きな力があります。
ちなみに機能的に分かりやすく優れているモノよりも、どこか神話的で謎めいた方が人気なのも昔からだそうです。(ミステリアス!)
人類の進歩と狩猟採集時代の本能(欲求)とのジレンマ
7万年前(狩猟採集社会)の認知革命(進化)から今日まで、異常なスピードで人類は文明やテクノロジーを発展させてしまったため、肝心の心身(遺伝子)の進化が追いついていないそうです。不思議な話ですが、自分たちで自分たちを社会不適合者にしています。
例えば人類の心は、ごく限られた濃いコミュニティ(家族や地域)の中で、いかに上手く立ち回り、仲間外れにされないかを重要視しています。
具体的には井戸端会議で情報を得ながら周囲と自分を比較し、ポジションを確認することで安心感を得ようとします。つまり人類は、生きるために他者比較に熱心で承認欲が強く、孤独にめっぽう弱い。
この生存本能が現代では不具合を起こしています。特にSNSの台頭で世界中の人々と比較してしまい、際限のない欲求・焦り・不安が生まれました。そして「自由」と「プライバシー」の名のもとに家族や地域との繋がりが希薄になり、孤独感に悩まされています。
また身体では、食料を効率よく蓄えたり、高カロリーな食べ物を好み逃さない生存本能が肥満や生活習慣病を引き起こしています。
「人生は自分との戦いだ」という言葉がありますが、自分の狩猟採集本能との戦いなのかもしれません。
でも本能なので抗えないですよね。これがいわゆるマーケティングで言う「生活者インサイト」です。無意識(遺伝子)に刻み込まれている本能欲求です。
以下に狩猟採集本能から受け継がれし人類の本能欲求*をまとめました。現代でもこのどれかに突き刺さるモノやサービスが選ばれているはずです。
*マズローの5段階欲求、マレーの2次的欲求リストを参考に独断と偏見にて編集
■生理的欲求(生命を維持したい、死や痛みを避けたい、繁殖したい)
・生存直結型欲求:空腹、渇き、排泄、痛みの回避、睡眠など
・Sex :性的欲求 生殖のための本能的な欲求。
■安全の欲求(危険や損失を避けて安心したい、自己防衛、自己保存)
・Harmavoidance :危険回避 危険や損害を避けて身を守りたい。
・Blame-Avoidance: 非難回避 他人から責められたり否定されたくない。
・Defendance 防衛 :自分の立場や信念を守りたい。現状維持。
・Order :秩序 整然とした環境や手順を好む。混乱を避けたい。
■所属と愛の欲求(仲間とつながりたい、孤独を避けたい)
・Affiliation :親和 仲良くなりたい、人とつながっていたい。
・Understanding :理解 世界や人を深く理解したい。
・Nurturance :養育 他人の世話をしたい、愛情を与えたい。
・Succorance :援助希求 他人に守ってもらいたい、依存したい。
・Deference :服従 尊敬する人に従いたい、社会的な秩序を守りたい。
■承認の欲求(主にコミュニティや他者から承認)
・Recognition :他者承認 他人から褒められたり、称賛されたい。
・Exhibition :自己顕示 自分を目立たせたい、見てほしい。
・Dominance :支配 他人をリードしたい、影響力を持ちたい。マウンティング。
・Aggression :攻撃 状況や他者に対して破壊的・変革的にかかわりたい。
・Contrariance :逆らい あまのじゃく的に、社会の期待に反発したい
・Abasement :自己卑下 自分を犠牲にしてでも他者に従いたい、媚びへつらい、許されたい
■自己実現の欲求(自己承認、自分らしくありたい、内発的、利他的)
・Autonomy :自立 自分の意思で自由に動きたい。
・Achievement :達成 難しい課題に挑戦し、成功したい。
・Cognizance :探求(知的好奇心) 知りたい、学びたい。
・Construction :創造 新しいものをつくり出したい。
・Play: 遊戯 創造的で自由な遊びを楽しみたい。
・Understanding :理解 世界や人を深く理解したい。※所属と愛の欲求と重複
・Nurturance :養育 他人の世話をしたい、愛情を与えたい。※所属と愛の欲求と重複
マーケティング 闇の力と防御方法
全人類が願う「幸福」もまた虚構です。
幸福とは自己の期待と現状の認識差分であり、オキシトシンやセロトニン、ドーパミンなどの幸福・快感ホルモンの分泌具合で感じる身体の状態です。
そして嬉しくも悲しかな、幸福感も不幸感も長続きしないようにプログラムされており、また慣れによって同じ刺激では同じ幸福・不幸感は得られないようにできているそうです。これも7万年前の死と隣り合わせの社会では有り難い機能ですが、安全な現代で生活するにはマイナス面も多いです。
そしてマーケティングを嫌味な言い方で表現すると、先述した本能欲求を煽り・ニーズとして顕在化・渇望させ、その場限りの解決(快楽)を開発・提案・消費してもらう、そして快楽が落ち着いた頃にまた煽る、その繰り返しで利益を得る活動です。
そう考えるとマーケティングは、資本主義社会の発展において、人類の性質を捉えた非常に効果的な手法ですよね。
一方で当の人類にとっては、本当に資本主義やマーケティングは良いものなのか怪しくなってきましたね。完全に自らの虚構に踊らされてますよ。でも確かに人類はお金(虚構)が絡むと人に危害を加えるし、国・宗教(虚構)のために自己犠牲も厭わない場合があるので、そういう生き物なのでしょうね。
でも私個人としては虚構に踊らされっぱなしも嫌なので、闇の資本主義マーケティング(?)から身を守るにはどうすれば良いか考えてみました!
結論は、不必要な情報を閉ざして幸福のハードルを下げ、足るを知り、少数の本当に大切な人とだけ深く関わりながら暮らす。そして不可避な不幸に対しては、そこに深い意味など考えないようにして、時間経過と恒常化機能に任せるのが良さそうです。
名付けて「幸せな井の中の蛙」作戦!
具体的には以下の生活行動を提案します。
・デジタル情報を制限(SNS断ちやスマホの接触制限)
・不要な他者比較は無視して、自分の価値基準を重視
・現状すでに在るものを、当たり前ではなく有り難く捉える
・家族や大切な友人との時間を優先(脱!謎の知り合いやコミュニティ)
・自らの欲望や感情を客観視する(瞑想やマインドフルネスを通じて)
とは言え、どれも頭では分かっているが実践が難しそうですね。
そうか、だから不幸せだと感じる人が多いのか。。
余談:人生の意味・目的という虚構
「私は何のために生きているのだろう・・」
これらの重たい人生の悩みも、虚構であり遺伝子の機能だったとは。。
生物学及び進化論的には、全ての生物に生きる目的などはなく、長い年月の中で自然淘汰されずに生存・繁殖に成功した結果だそうです。生きる目的などなくても生き残っている生物は沢山います。ややこしい表現ですが、人類が生存競争を勝ち抜いた手段が、目的です。
目的という虚構があったほうが戦略的かつ効果的にリソースを使えますし、多くの他者と協力することができます。なので個人レベルの幸福な人生を送るには、手段としての人生の目的が持ったほうがお得そうですね。
おまけ情報
●そもそもマーケティング活動とは何だっけ?が気になった方はこちら!
●生活者インサイトについてもっと詳しく!はこちら
●ココナラでこんなこともやっています。興味があればぜひ!
マーケティングとは?がざっくり理解できます 実務10年以上で得た実経験を基に、要点をギュギュッとお届け。




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